覚え書き。

日常考えたことのメモ。

映画『ダークシャドウ』

映画『ダークシャドウ』を見た。

 まず,話のあらすじとしては,新大陸アメリカにはるばる渡ってきて水産業で成功した主人公一家(コリンズ家)は地元の名士として,地名になるほどまで成長。コリンズウッドと呼ばれる邸宅を建てるにいたる。一方,主人公に惚れている下女(実は魔女)は,主人公となんとか一緒になろうと画策するが,失敗。主人公と添い遂げようという女性に呪いをかけ,自ら命をたつように仕向ける。主人公は共にガケから身投げするが,魔女の呪いによりヴァンパイア化し,死ぬことができないカラダに。

どうやっても,主人公の気が引けないことがわかった魔女は,ヴァンパイアであることを村人に明かすことで,主人公を棺桶に放り込み200年の眠りにつかせる。

さて,それから200年たってコリンズ家は大いに衰退しており…というストーリー。

この映画,キーワードがいくつかある。まず「血と家族」。血と家族は何より大事だよということが映画の冒頭にナレーションで語られる。そして「呪い」。魔女の呪いによって主人公は死ねないカラダになり,コリンズ家は呪いによって没落していく。そして,魔女自身も,主人公バーナバスのことを愛しているのだが,その思いは通じないという呪いにかかっている(バーナバスは「オマエは誰も愛せないのだ」と言っている)。

200年たった世界でも,コリンズ家はなんとか持ちこたえている。敵対する水産会社の代表はなんと200年前の魔女。人前では「ひいお祖母様」と言っているけど,それは実は自分のこと。バーナバスを棺桶に放り込むだけては飽き足らず,200年間ずっとコリンズ家を痛めつけていたという話。

キーワードを読み解く前に,いくつかの疑問を呈しておきたい。

1)映画のストーリーがバーナバス中心で,他のキャラクターがあまり描かれない。たとえば,精神科医はどうしてコリンズ家に肩入れしているのか,女主人のエリザベスはやけにしっかりしているが背景がよくわからない

2)ヴィクトリア・ウィンターズとかマギー・エヴァンスは話のカギになるのだけれど,魔女の呪いで200年前に崖から身投げしてしまった彼女,そして同じく魔女の呪いで崖から身投げしたデヴィット・コリンズの母は,いずれも魔女の呪いで命を落としたり,命を落としかけている。一方,それらの3人には何かつながりがあるような,ないような,である。

3)バーナバスに惚れた女は皆おかしくなるよ,という設定。

映画を見ながら思ったのは以上の3点。

まず,1)について。ひとつは描く時間がなかったという話ではないかと。血と家族,呪いの話を描くだけでも割に大変だ。精神科医はアルコールが手放せずしょうもない感じに見せたり,エリザベスの弟はパーティーでこそ泥したり,街の女と浮気したりと,しょーもない感じで描いて終わりという感じだった。まあ,ここは,バーナバスに注目して,ということで流す。エリザベスがバーナバスを励ましたり,魔女と敵対する場面は女主人としての貫禄があってとてもよかった。

2)まず亡くなった3人はいずれもコリンズ家に恋しているという共通点がある。(200年前になくなった彼女はバーナバスと婚約,デヴィットの母親もコリンズ家に嫁いでいるし,ヴィクトリアもバーナバスに恋している)。最後の場面で,ヴィクトリアは実は身投げした彼女だった,というような描かれかたもしているので,もしかすると裏で血縁がつながっているという話かもしれない(デヴィット自身が「見える」体質であることと,ヴィクトリアが「見える」体質であることを鑑みると,遠縁の可能性もありそう)。

3)バーナバスは魔女に対して「すべての原因はオマエだ」と指摘してますが,魔女からすれば「バーナバスが悪いんだ」という話になります。さらに元をたどると,映画の冒頭で新大陸に渡る前の時点で,魔女はバーナバスに見ほれているシーン(もちろん子どもだけど)があるんですね。だから,呪いの発端はどっちがどちらかというのはなさそう。

そうやってみると,「呪い」というキーワードは,あくまで映画の主題にしたかった「血と家族」ってところを説明するための題材でしかない可能性もある。途中,バーナバスは,家族の一員だった精神科医と,ろくでなしなデヴィットの父親を追い出す。この辺も,家族だから云々ではなく,家族を支える支柱たる人でなければいけないという厳しさも表しています。

 

最後に,この映画で映像としての見所をいくつか。

・200年前のアメリカは主にCGで,1970年代のアメリカはおそらく街をひとつ作って見せています。画面の色合いも含めて,大変美しく,また雰囲気を感じる映像です。

・マクドナルドのロゴタイプや,シェル石油のとてもださい(けど色はいまと同じ)看板,主人公達の服装や,屋敷内の「これは新しいものか?古いのか?」と見間違うような小物の数々。

・ヒッピー(かわいそうにバーナバスの「食事」にされてしまう)の映像。キャンピングカーみたいなのに乗ってその辺をウロウロして,ハッパ吸って「ピース(平和)!」って言ってるのとか,きっとこういう感じだったんだろうな,と。